東京地方裁判所 昭和38年(ワ)2770号 判決 1964年4月21日
原告・反訴被告
有限会社三河製作所
右代表者代表取締役
稲垣政一
右訴訟代理人弁護士
花岡巌
根本孔衛
被告・反訴原告
サンエス電子株式会社
右代表者代表取締役
椨隆三郎
右訴訟代理人弁護士
菅谷瑞人
右輔佐人弁理士
井上重三
主文
一 被告は、原告に対し、別紙第一目録記載の回転軸を有する小型可変蓄電器について、被告の有する登録第五六四、四二一号の実用新案権に基づき、その製造、使用、譲渡又は譲渡のための展示の差止めを求める権利を有しないことを確認する。
二 反訴原告の請求は、いずれも棄却する。
三 訴訟費用は、本訴及び反訴を通じて、被告・反訴原告の負担とする。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件(本訴)について。
原告訴訟代理人は、主文第一項同旨及び「訴訟費用は、被告の負担とする。」との判決を求め、被告訴訟代理人は、「原告の請求は、棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。
二、昭和三八年(ワ)第四、〇一八号事件(反訴)について。
反訴原告訴訟代理人は、「一 反訴被告は、別紙第三、第四目録記載の回転軸を、業として製造し、販売し又は販売のために展示してはならない。二 反訴被告は、反訴原告に対し、金三百十八万四千二十円及びこれに対する昭和三十八年五月二十八日から支払いずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。三 訴訟費用は、反訴被告の負担とする。」との判決並びに右第二項につき仮執行の宣言を求め、反訴被告訴訟代理人は、主文第二項同旨及び「訴訟費用は、反訴原告の負担とする。」との判決を求めた。
第二、当事者の主張
昭和三八年第二、七七〇号事件について。
(請求の原因)
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のとおり述べた。
一、被告は、次の実用新案権の権利者である。
登録番号 第五六四、四二一号
名 称 超小型可変蓄電器の回転軸
登録出願 昭和三十四月八月十三日
出願公告 昭和三十六五七月十日
登 録 昭和三十七年二月二十二日
二、本件実用新案権の登録出願の願書に添附した明細書の登録請求の範囲の記載は、別紙第二目録該当欄記載のとおりである。
三、本件登録実用新案は、超小型可変蓄電器の回転軸の構造に関するもので、その要件及び作用、効果は、次のとおりである。すなわち、
(一) 本件登録実用新案の要件
(1) 摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に円錐状傾斜面8を有する段部7を設けたこと。
(2) 段部7の外周に一体にストツパー9を突設したこと。
(二) 本件登録実用新案の作用効果
(1) 前記摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に円錐状傾斜面8を有する段部7を設けたことにより、回転動作が安定円滑となり、台板1が絶縁板であつても、又は金属板であつても、回転軸と台板1との摩擦による減摩を僅少にし、長期にわたり使用しても、可動極板12、12と固定極板14、14の間隔を均一に保持して、回転軸の回転にブレを生じさせないこと。
(2) 段部の外周に一体にストツパー9を突設したことにより、固定極板及び可動極板を直接上面より組み立てることが可能で簡便であり、また、ストツパー9は、自然に動いたり取れたりせず、ストツパーの角度が一定してくるから、固定極板と可動極板との間隔は常に一定に保持され、工作に当たり、傾斜面8と段部7を削り出してストツパー9を形成するのみで、他に複雑な工作を必要とせず、簡単に製作できること。
(三) 被告の答弁第二項に対する主張
本件登録実用新案の明細書の「実用新案の説明」欄の記載によれば、従来の回転軸の構造のものとして示された水平内底面を有する段部についても、台板の内周傾斜面をこれに整合させることにより、面接触をする軸受の構造のものを実現することが可能であり、本件登録実用新案がこのような面接触をする構造のものを含まないことは、右明細書の記載により明らかである。
また、従来から回転軸の段部に弧状傾斜面を設け、この傾斜面と台板の内周傾斜面とを面接触させる構造の回転軸は、本件実用新案の登録出願前から公知であつた。
したがつて、回転軸の段部の傾斜面と台板の内周傾斜面の接触する部分の構造は、登録請求の範囲の記載どおり、摘み軸と可動軸との間の支承部分に一体に円錐状傾斜面を有する段部を設けたものに限定して解釈すべきである。
被告は、段部の傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触をする構造となつていることが、本件登録実用新案の要件の一つであるとするが、このような面接触をする回転軸の構造一般のものが本件登録実用新案の要件の一つであるとするのは、登録請求の範囲の記載を無視するものである。
四、原告は、業として、別紙第一目録記載の回転軸を製造し、右回転軸を使用した超小型可変蓄電器(以下、ポリバリコンという。)を製造、販売している。
五、原告の回転軸の構造上の特徴は、次のとおりである。
(1) 摘み装入部分10と可動極板固定部分11との間の支承部分に一体に弧状傾斜面8を有する段部7を設けたこと。
(2) 段部7の外周に一体にストツパー9を突設したこと。
六、原告の回転軸と本件登録実用新案の回転軸とを対比すると、次のとおりである。すなわち、
本件登録実用新案の回転軸と原告の回転軸は、いずれもその段部の傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触するものであるが、前者においては、摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に設けた傾斜面が円錐状であるに対し、後者においては、摘み装入部分10と可動極板固定部分11との間の支承部分に一体に設けた傾斜面が弧状であることにおいて、両者は相違し、したがつて、後者は、前記本件登録実用新案の要件の一つを欠き、その技術的範囲に属しない。
七、仮に、原告の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属するとしても、原告は、本件実用新案権に対し、先使用による通常実施権を有する。すなわち、
原告は、本件実用新案登録出願の際、善意で、業として、本件登録実用新案の技術的範囲に属する別紙第一目録記載の回転軸を製造し、これを使用したポリバリコンを製造、販売して現在に至つている。
八、したがつて、被告は、原告の製造する回転軸及びこれを使用したポリバリコンの製造、販売の差止めを求める権利を有しないにかかわらず、右製品の製造、販売の差止めを求めるので、被告は、これが製造、使用、譲渡又は譲渡のための展示の差止めを求める権利を有しないことの確認を求める。
(答弁)
被告訴訟代理人は、答弁として、次のとおり述べた。
一、請求原因第一、第二項の事実は、いずれも認める。
二、同じく第三項の冒頭及び(一)の(2)は認めるが、(一)の(1)の摘み軸と可動軸との間の支承部分の傾斜面が円錐状であることは、本件登録実用新案の要件ではなく、右傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触をする構造となつていることが、その要件である。このことは、本件登録実用新案の明細書の「実用新案の説明」欄の記載に徴し明らかである。
三、同じく第四、第五項の事実は、いずれも認める。
四、同じく第六項の事実中、両者の回転軸の構造上の差異が原告主張のとおりであることは認めるが、原告の回転軸は、その段部の傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触するのであるから、本件登録実用新案の技術的範囲に属するものである。
五、同じく第七項の事実は否認する。
六、同じく第八項の事実中、被告が原告に対し、その製品の製造、販売の差止めを求めていることは認める。
昭和三八年(ワ)第四、〇一八号事件について。
(反訴請求の原因等)
反訴原告訴訟代理人は、反訴請求の原因等として、次のとおり述べた。
一、反訴原告は、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件原告(反訴被告)の前掲請求原因第一項記載の実用新案権の権利者であり、本件実用新案権の登録出願の願書に添附した登録請求の範囲の記載は、別紙第二目録該当欄記載のとおりである。
二、本件登録実用新案は、超小型可変蓄電器の構造に関するものであり、その要件は、次のとおりである。すなわち、
(1) 摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に段部7を設けたこと。
(2) 右段部は、傾斜面を有すること。
(3) 右傾斜面は、台板の内周傾斜面と面接触をすること。
(4) 右段部の外周に一体にストツパー9を突設したこと。
三、反訴被告は、現に、別紙第三、第四目録記載の回転軸(別紙第四目録記載の回転軸と別紙第一目録記載の回転軸とは同一物件である。)を業として製造、販売又は販売のために展示している。
四、反訴被告の各回転軸と本件登録実用新案の回転軸とを対比すると、次のとおりである。すなわち、
別紙第三目録記載の回転軸は、本件登録実用新案の回転軸の要件をすべて具備しており、別紙第四目録記載の回転軸は、前掲昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件の被告(反訴原告)の答弁第二項のとおり、摘み軸と可動軸との間に一体に設けた傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触することが本件登録実用新案の一つの要件であるから、本件登録実用新案の技術的範囲に属する。
五、反訴被告の前記各回転軸の製造、販売又は販売のための展示行為は、本件実用新案権を侵害するものであるから、右侵害の停止及び予防のため必要な行為を求める。
六、反訴被告は、本件実用新案権を侵害するものであることを知り、又は知りえたにかかわらず、過失によりこれを知らずして、昭和三十六年八月一日から昭和三十八年四月三十日までの間、前記各回転軸を製造、販売し、これがため、反訴原告に対し、業務上多大の損害を蒙らせた。しかして、その損害額は、金三百十八万四千二十円である。すなわち、反訴被告の右期間における製品の販売額は、一カ月平均金二百十六万六千円であり、反訴被告は、右販売により一カ月平均右販売額の七分に相当する金十五万千六百二十円の利益を挙げ、右期間を通じ合計金三百十八万四千二十円の利益を挙げたものである。
よつて、反訴原告は、反訴被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として前記金三百十八万四千二十円及びこれに対する不法行為の後である昭和三十八年五月二十八日から支払いずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。
仮に、別紙第四目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術範囲に属しないとしても、反訴被告は、本件実用新案権を侵害することを知り、又は知りえたにかかわらず、過失によりこれを知らずして、昭和三十七年六月から昭和三十八年三月までの間、別紙第三目録記載の回転軸を製造、販売し、これがため、反訴原告に対し、業務上多大の損害を蒙らせた。しかして、その損害額は、金百五十四万円である。すなわち、反訴被告は、右期間二十万個の製品を製造し、これを金二千二百万円で販売し、右販売により、右販売額の七分に相当する金百五十四万円の利益を挙げたものである。
七、反訴被告の答弁等第七項の抗弁事実は否認する。
(答弁等)
反訴被告訴訟代理人は、答弁等として、次のとおり述べた。
一、反訴請求原因第一項の事実は認める。
二、同じく第二項の本件登録実用新案の要件については、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件における原告(反訴被告)の請求原告第三項に述べたとおりである。
三、同じく第三項の事実は認めるが、別紙第三目録記載の回転軸は、反訴原告から警告を受けた後は製造していない。
四、同じく第四項の事実中別紙第三目録記載の回転軸に関する部分は認めるが、その余は否認する。別紙第四目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属しないことは、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件における原告(反訴被告)の請求原因第六項に述べたとおりである。
五、同じく第五項の事実は争う。反訴被告は、別紙第三目録記載の回転軸を現在製造、使用していないし、また、将来これを製造、使用する意図もないから、反訴原告の右物件についての差止請求は、理由がない。
六、同じく第六項の事実は否認する。
七、仮に、別紙第四目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属するとしても、反訴被告は、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件における原告(反訴被告)の請求原因第七項記載のとおり、本件実用新案権に対し、先使用による通常実施権を有し、したがつてまた、これと同一技術的範囲に属する別紙第三目録記載の回転軸の製造及びこれを使用したポリバリコンの製造、販売についても、反訴被告は、反訴原告に対し、損害賠償の義務を負うものではない。
第三、証拠関係≪省略≫
理由
(争いのない事実)
一、被告が本件実用新案権の権利者であること、本件実用新案権の登録出願の願書に添附した明細書の登録請求の範囲の記載が別紙第二目録該当欄記載のとおりであること、原告が、業として、別紙第一目録記載の回転軸(別紙第四目録記載の回転軸と同一物件)を製造し、右回転軸を使用したポリバリコンを製造、販売していること、右回転軸の構造上の特徴が原告主張のとおりであること、及び右回転軸の段部の傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触するものであることは、当事者間に争いがない。
(第一目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属するかどうか。)
二、前掲当事者間に争いのない本件実用新案権の登録請求の範囲の記載に、成立に争いのない甲第一号証(実用新案公報)の「実用新案の説明」欄の記載及び同添附の図面を合わせ考えると、次のことを認めることができ、他に右判断を覆すに足る資料はない。すなわち、
本件登録実用新案の要部は、支柱13、13、13、13、13により支持した台板1と絶縁板15との間に固定極板14、14及び可動極板12、12を装置した超小型可変蓄電器において、
(一) 摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に円錐状傾斜面8を有する段部7を設けたこと、
(二) 段部7の外周に一体にストツパー9を突設した回転軸を設けたこと、
を必須の要件とするものであり、右(一)の構造により、回転軸の段部の傾斜面は、台板の内周傾斜面と面接触することにより、面接触でない接触をする場合と比較して、回転動作が安定円滑となり、台板が絶縁体であつても、又は金属板であつても、回転軸と台板との摩擦による減摩を僅少にし、長期にわたり使用しても、可動極板と固定極板の間隔を均一に保持して、回転軸の回転にブレを生じさせないこと、右(二)の構造により、固定極板及び可動極板を直接上面より組み立てることができて簡便であり、また、ストツパーは、自然に動いたり取れたりせず、ストツパーの角度が一定してくるから、固定極板と可動極板との間隔は常に一定に保持され、工作に当たり傾斜面と段部を削り出してストツパーを形成するのみで他に複雑な工作を必要とせず、簡単に製作できる作用及び効果があることである。
しかして、原告の製造、使用又は販売する別紙第一目録記載の回転軸は、超小型変蓄電器に使用されるものであること、並びにその回転軸は、(一)摘み装入部分10と可動極板固定部分11との間の支承部分に一体に弧状傾斜面8を有する段部7を設けたこと及び(二)段部7の外周に一体にストツパー9を突設したことを構造上の特徴とすることは、当事者間に争いがなく、右(一)(二)の構造上の特徴が、本件登録実用新案における前示(一)(二)の要件にそれぞれ対応するものであることは、前掲登録請求の範囲の記載と第一目録記載の回転軸とを対比することにより、明らかである。
よつて、本件登録実用新案における前示要件と第一目録記載の回転軸における前記構造上の特徴とについて、前掲甲第一号証に証人(省略)の証言を参酌して比較検討すると、第一目録記載の回転軸は、本件登録実用新案の要件をすべて具備しており、かつ、作用及び効果においても、両者は、同一であるから、右回転軸は、本件登録実用新案の技術的範囲に属するものというべく、本件において、右判断を覆すに足る資料は、全く存在しない。以下、これを分説する。
(一) 本件登録実用新案の回転軸においては、摘み軸と可動軸との間の支承部分に設けた段部の傾斜面が円錐状であるに対し、第一目録記載の回転軸においては、右対応部分である段部の傾斜面が弧状であることについて、両者に差異があるが、前者における摘み軸10と可動軸11との支承部分に一体に円錐状傾斜面を有する段部を設けた前示(一)の要件は、回転軸を台板に回転自在に取り付ける手段として、従来、軸承部にボールを介在させたり、回転軸に線接触させる隅角を具えた軸承支持長を形成したものが使用されていたが、このような回転軸においては、これを回転して使用している間に、軸承部が摩滅して軸と台板との間にガタを生じ、回転軸を回転させる時に揺振して可動極板と固定極板との間隔が狂い、蓄電器の容量変化に支障を来たす場合が生じたため、このような技術上の欠陥を解決する手段として考案されたものであり、その要点とするところは、回転軸の傾斜面と台板の内周傾斜面とが面接触をするように構成されていることである。しかも、後者の傾斜面が台板の内周傾斜面と面接触するものであることは、原告の自認するところであるから、作用及び効果において、両者は全く同一である。したがつて、後者の傾斜面を弧状としたことによる差異は設計上の微差というべきである。
(二) 回転軸の段部の外周に一体にストツパーを突設したことについては、両者は、その構成を全く同じくし、作用及び効果についても何ら差異のないことはいうまでもない。
原告は、本件登録実用新案の回転軸の段部の傾斜面と台板の内周傾斜面の接触する部分は、本件登録実用新案の明細書の記載からも、また、回転軸の段部の傾斜面を弧状としたものは、本件実用新案登録出願前から公知であつたから、本件登録実用新案にかかる回転軸の段部の傾斜面は、登録請求の範囲の記載どおり、円錐状のものに限定して解釈すべきである旨主張するが、本件登録新案の明細書の記載に徴しても、また、原告主張の先行技術があるからといつて、回転軸の段部の傾斜面は、円錐状のものに限定して解釈すべき根拠は見出しえないから、原告の右見解には賛同することはできない。
(先使用による通常実施権の存否について。)
三、(証拠―省略)を綜合すると、原告会社は、本件実用新案登録出願の日である昭和三十四年八月十三日当時現に善意で、業として、別紙第一目録記載の回転軸を製造し、右回転軸を使用したポリバリコンを製造、販売していたことを認定しうべく、他に右認定を覆すに足る証拠はない。
しかして、第一目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属することは、前説示のとおりであるから、原告は、本件実用新案権に対し、先使用による通常実施権を有するものということができる。
したがつて、被告は、原告に対し、第一目録記載の回転軸を有する小型可変蓄電器について、本件実用新案権に基づき、その製造、使用、譲渡又は譲渡のための展示の差止めを求める権利はこれを有しないものといわなければならない。(被告の差止め及び損害賠償請求について。)
四、原告が、業として、別紙第四目録記載の回転軸を製造し、右回転軸を使用したポリバリコンを現に製造、販売し、別紙第三目録記載の回転軸を被告の警告があるまで製造し、右回転軸を使用したポリバリコンを製造、販売していたこと、及び第三目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属することは、当事者間に争いがなく、第四目録記載の回転軸が本件登録実用新案の技術的範囲に属することは、さきに同一物件である第一目録記載の回転軸につき説示したとおりであるから、原告は、第四目録記載の回転軸の製造、使用又は販売等につき、本件実用新案権に対し、先使用による通常実施権を有するものというべく、したがつてまた、これと同一技術的範囲に属する第三目録記載の回転軸を製造し、使用し又は販売したとしても、原告は本件実用新案権を侵害したものといいえないから、第三、第四目録記載の回転軸の製造、販売等の差止め及び右侵害を前提として不法行為に基づき損害金の支払を求める被告の請求は、すべて理由がないものといわざるをえない。
(むすび)
五、以上説示のとおりであるから、昭和三八年(ワ)第二、七七〇号事件における原告の請求は、理由があるとしてすべてこれを認容し、同年第四、〇一八号事件における反訴原告の請求は、理由がないとしていずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 三宅正雄 裁判官武居二郎 白川芳澄)
第一目録
図面に示すように、摘み装入部10と可動極固定部11との間の支承部分に、一体に弧状傾斜面を有する段部7を設け、段部7の外周に一体にストツパー9を突設した小型可変蓄電器における回転軸。
第二目録
特許庁実用新案公報(実用新案出願公告昭三六―一七八五〇)
公告昭和三六年七月一〇日
出願昭和三四年八月十三日
実願昭三四―四四九二九
考案者椨隆三郎
出願人株式会社三開社
代理人弁理士井上重三
超小型可変蓄電器の回転軸
図面の略解
第一図は本実用新案を使用した超小型可変蓄電器の縦断側面図、第二図は同上要部の分解斜面図、第三図は一部を切欠して示す本実用新案の側面図、第四図は一部を切欠して示す従来の回転軸の側面図である。
実用新案の説明(省略)
第三目録
図面に示すように、摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に、一体に段部7を設け、右段部は、台板の円周傾斜面と面接触するように円錐状の傾斜面8を有し、右段部の外周に一体にストツパー9を突設した小型可変蓄電器における回転軸。
第四目録
図面に示すように、摘み軸10と可動軸11との間の支承部分に一体に段部7を設け、段部7は、台板の円周傾斜面と面接触するように弧状の傾斜面を有し、右段部の外周に一体にストツパー9を突設した小型可変蓄電器における回転軸。